このブラウザは動作対象外となる予定です。
引き続きエコルとごしのサイトをご利用いただくには、
サポートされているブラウザに切り替えてください。

※ダウンロードやインストール方法などにつきましては、
ブラウザの提供元へお問合せください。

イベントレポート

  • アイコン: ホーム
  • 開催イベント
  • イベントレポート
  • 2023/4/30 いとうせいこう×東 光弘スペシャルトークイベント「今すぐ知りたい日本の電力 明日はこっちだ ~ソーラーシェアリングのひみつ~」

2023/4/30 いとうせいこう×東 光弘スペシャルトークイベント「今すぐ知りたい日本の電力 明日はこっちだ ~ソーラーシェアリングのひみつ~」

# Pick up

日時:2023年4月30日(日)13:00~14:30
場所:3F 多目的スペース
★開催概要はこちら

2023年5月1日(月)の開館1周年を祝い、その前日に開催した「エコルフェス -2023 SPRING-」。その中でも目玉となるスペシャルトークイベントでは、作家・クリエイターなどとして活動するいとうせいこうさん、市民エネルギーちば株式会社代表取締役の東 光弘さんにお越しいただき、「ソーラーシェアリング(農営型太陽光発電システム)」の取組みを中心に、未来への想いをお話しいただきました。

現在放送中のNHK「らんまん」にも出演されているいとうせいこうさんは、講談社エッセイ賞を受賞した「ボタニカル・ライフ」などの著作を発表する作家・小説家であるとともに、音楽家としてもジャパニーズヒップホップの先駆者として活躍。そんな多岐にわたるクリエイター活動と並行して、福島県に太陽光発電所「いとうせいこう発電所」をもち、新たな電気料金プラン「アーティスト電力」なる企画を始動されるなど、再生可能エネルギーの普及を目指して、一歩一歩、ワクワクする取組みを進められています。

対談相手である市民エネルギーちば(株)・(株)TERRA代表取締役の東光弘氏は、千葉県匝瑳市で「地域共生型ソーラーシェアリング」を実践し、国内最大規模を誇る“ソーラーシェアリングの郷”を築いてきたほか、全国各地でソーラーシェアリングを広げるべく取り組まれています。もともとは有機農産物の流通にかかわる仕事をしていたそうですが、2011年の事故をきっかけに太陽光発電の分野に取り組むようになったとのこと。

お2人は、3月上旬にいとうさんが発売した書籍『今すぐ知りたい日本の電力 明日はこっちだ』(東京キララ社)の中で対談されています。今回は書籍を飛び出し、質疑応答を交えて1時間半ほどお話をお聞きしました。

大規模な太陽光パネルで私たちがイメージするのは、山の上にドカンと設置されたものではないでしょうか。「ソーラーシェアリング」では、大切な山を切り開いて設置する必要はありません。高さのある架台に太陽光パネルを設置し、その下で農業を行います。太陽光パネルを敷き詰めるのではなく、一定間隔をあけて設置することで、必要な日射量を確保することができ、作物への影響も極力小さくすることができます。耕作放棄地など眠っている土地を蘇らせることができるというメリットもあり、国土が狭い日本にも適した取組みであると考えられています。

農家さんが使用するトラクターの電力を“自分たちで”発電することが可能であり、まさに農業と電気(太陽光発電)を両立させるその仕組みについて、いとうさんは「同時二毛作」と呼んでいます。

未来を変える技術

イベント申込時に実施したアンケートでは、「ソーラーシェアリング」の存在をすでに知っていた方は2割ほど。私自身も今回の企画を考える中で初めてその存在を知りました。

今回のトークイベントでは、そのほかにも新しい発見がたくさんありました。たとえば、2009年に日本の桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らが開発したという「ペロブスカイト太陽電池」。薄いフィルムに印刷するだけで、太陽光パネルが誕生してしまうという驚きの技術。

風に強く雪が積もりづらいほか、日本のように物が多い屋上や壁面にも設置が可能。さらに色を変えることもできるため「木の葉の形の太陽光パネルをたくさんつくれば、フェイクグリーンのように街中に設置できる」と想像する東さん。なんてワクワクする未来でしょうか。

お2人からは終始「自分たちが未来を変える」という前向きで、楽しそうな雰囲気が感じられました。「気持ちのいい社会をつくっていきたいという想いありき」と話します。

いとうさんは「国境なき医師団」の活動に同行し、南スーダン、ウガンダなど世界のリアルな現場を訪ねてルポルタージュを執筆された経験から、次のようなエピソードを話してくれました。

「電線がない、伝統的な小さな土の家の前に、小さな太陽光パネルが2枚だけ置かれている。アフリカの人々は、そこでスマホを充電し、常に情報だけは最新のものを得られるようにしている。」

私たちは現状を変えること、新しい技術に対して身構えてしまうこともありますが、「アフリカの人々のほうがバイアスや先入観が少ないため、最先端のものがすっと入ってしまうこともある」とのこと。地球の裏側でそんなことが起きているなんて、とても驚きました。

自分なりの「革命」

皆さんは、「オフグリッド」という言葉を聞いたことがありますか?

「送電網(グリッド)に繋がれていない(オフ)状態」であることを指した言葉で、電力会社に頼らず、自分たちで自分たちの電力を自給自足している状態のことを意味します。新たな生活様式として、特に2011年の東日本大震災以降、注目が集まってきました。

未来の子どもたちの生活を考えたとき、蓄電池は必須のものになるのではないかと感じたいとうさんは、現在、仲良しのお隣さんと一緒に、3軒でシェアしながらオフグリッドな生活を部分的に実践されているとのこと。

また、「今あるインフラは永遠に続くものではない。地中化した電線も、いつかは掘り起こして再度点検をしないとならない」というお話もあり、自分たちで自立して電力を確保することの必要性が、改めて目の前に迫ってきました。当たり前の生活がいつか変わるという事実に向き合い、自分なりの「革命」を起こさなくてはなりません。

川上(電力会社)から川下(各家庭)へ・・・ではなく、各家庭でちょっとずつ電気をつくることが当たり前になる未来。そんな未来をつくるのは、私たち一人ひとりです。

私たちが私たちの生活をつくっていく

いとうさんが「みんな電力」(株式会社UPDATER)と一緒に取り組む「いとうせいこう発電所」は、いとうさんご自身が企画し、「みんな電力」に話を持ち掛けたことからスタートしたそうです。そこからほかのミュージシャンやアーティストも加わり、「太陽のタイジ発電所」(シアターブルック/佐藤タイジ)、「大木伸夫発電所」(ACIDMAN)など、新たな電力シェアサービスが広がっています。

東さんから「なぜこういった活動をしているのか」と改めて問われたいとうさんは、ご自身の活動に対して「できるからやっている」と答えました。続けて、「みんな本当はできるのにできないと思っていることがあまりにも多い」「やろうと思えばできちゃうんだよ、誰も止めないんだよ」と話しました。

自給自足を実現するためには、自分たちで決めること、そしてそれを“楽しんでいく”ことが大切だと伝えます。

世界の名だたる企業も例に出しながら、「このままではあらゆる自然がダメになることに世界は気づいている」としたうえで、「10年前であれば壁面緑化なんて無理だと思われていたが、今や当たり前のものとなった」「小さく変えていけば、大きな変化は起こせる」と締めくくりました。

トークイベントの最後には質疑応答の時間もあり、「2年後に東京都で住宅でソーラーパネルの義務化が始まることについて」など、多くの質問が飛び交いました。それに対する東さんの答えは、「2年後を待たず、すぐにでもやったらいいですよ!」。自分ができることから、小さな変化を起こすタイミングですね。

参加者アンケートでは「電力問題を自分事として考えられるようになりました」「品川区の公共施設の屋上や敷地にソーラーシェアリングを!」「いとうせいこうさん・東さんのお話をまた聞きたいです。いろんな人が聞くべきだと思います」など、多くのメッセージをお寄せいただいた今回のイベント。

最後に、トークイベントにぜひ参加したいと名乗りを上げてくれた当館ボランティアによるレポートをお届けします。区民の目線で、どんなところが特に印象に残ったのか。あわせてご一読いただければ幸いです。

イベントレポート by.エコルボランティア

今年3月に両氏の対談を載せた「今すぐ知りたい日本の電力 明日はこっちだ」が発刊され、環境学習施設であるエコルとごし1周年のスペシャルイベントとして開催されるのはタイミング的にも内容的にもとても親和性が高く、環境問題について両氏の長年の知見を生で知る貴重な場となりました。

東氏は長い間、太陽光発電と農業を融合する事業に携わっておられ、初めて聞くようなお話がいとうせいこうさんとの会話に次々に飛び交います。

例えば・・・

・太陽光発電でトラクターを遠隔操作することで生産効率が向上し高齢化による農業人口減少の歯止めになること。

・1年間で土中の炭素(有機物)を0.4%(4/1000)増やすことができれば人間のCO2排出の影響を帳消しできるという「4パーミルイニシアティブ」。

・土中の微生物等を最大限に活用し、化学肥料に頼らずに肥沃な土で成功したアメリカの「ゲイブ・ブラウン農場」。

など。

今回のメインテーマである日本の電力についても、今、何がどのような状態にあるかを教えていただきつつ、両氏各々の見解を聞くことができました。海外事情との比較からみるこの国の現在を知ることにもなりました。インフラや規制、技術力の違いのある中でとりわけ両氏が唱える「水資源やエネルギーの供給を公共インフラに頼らずに住居や地域単位で自給自足する」については興味深く聞きました。

他の参加者からも「多くの知らなかったことが聞けて有意義だった」との感想があり、私も環境学習施設であるエコルとごしで身近な電力問題解決方法のひとつを知る機会となったと多くの方が感じたと思いました。

(エコルとごしボランティア)

終わりに・・・

イベントの最後には、いとうさんの書籍「今すぐ知りたい日本の電力 明日はこっちだ」(東京キララ社)の販売・サイン会を実施。また、いとうさんが「みんな電力」(株式会社UPDATER)とともにコロナ禍に始めた「Live from the Office」(企業がミュージシャンにオフィスを解放し、演奏の場を増やす取組み)のシンボルである“環境に負荷をかけないTシャツ”の販売会も行いました。

Tシャツは、再生可能エネルギーで商品をつくる墨田区の老舗「アシダニット」さんの協力でつくられたもので、農薬を使わずに栽培したオーガニックコットン製。オーガニック繊維で作られた製品のための国際基準 「GOTS(Global Organic Textile Standard)認証」もついています。私も1枚購入して早速着ているのですが、柔らかく、着心地のよさは抜群です。

いとうせいこうさん、東光弘さんには、メッセージ展示用のメッセージカードも書いていただきました!(2023年5月末現在、お2人のメッセージカードの展示は終了しています)

また、最後にエコルとごし自慢の屋上にご案内。品川区内の区有施設で最大規模となる288枚の太陽光パネルと蓄電池をご覧いただきました。

お2人からもエコルとごしの建物、雰囲気についてたくさんお褒めの言葉をいただきました。「こんなふうに、人のあたたかさを感じる施設は少ない」という東さんの言葉、とてもうれしかったです。

これからもこの場所を大切に、すぐ隣にある戸越公園の自然を守りながら、区民の皆さんと一緒に、環境問題や地球の未来を考えるさまざまな機会をつくっていきます。

いとうせいこうさん、東光弘さんをはじめ、イベントにご参加くださった皆さまと企画にご協力いただいた関係者の皆さまへ、この場を借りて感謝申し上げます。またぜひエコルとごしでお会いしましょう!

(広報担当)

>> 「エコルフェス -2023 SPRING-」オープニングセレモニーのレポートはこちら
>> 「エコルフェス -2023 SPRING-」各ブース・イベントのレポートはこちら

 

月間カレンダーはこちら